物置はオモチャたちの世界だった。天井からぶら下がる裸電球の光が、埃の舞う空気の中でぼんやりと戦場を照らしている。この世界の平和は、長らく保たれていなかった。棚の奥からやってきた、錆びついたゼンマイ仕掛けの兵隊たちが、静かに領土を広げ続けているのだ。
彼らに立ち向かうのは、かつて子供部屋で輝いていた戦隊ヒーロー、レッドファイターだ。鮮やかな赤色のスーツは、今ではすっかり色褪せ、胸のエンブレムにも細かい傷が刻まれている。それでも、彼の両手は武器を持つためにいつでも準備ができていた。
「どうする、レッドファイター?」
レッドファイターの隣にいたのは、青いスーツを着たブルーファイターだ。彼もまた、昔の栄光を背負って戦場に立っている。
「前線は突破された。このままじゃ、ミニカー部隊もプラモデル師団も全滅だ。」
レッドファイターは、冷静に状況を分析した。ゼンマイ兵は数で圧倒し、しかも動きが予測できない。彼らの攻撃は、一見ランダムに見えて、実は精密な計算に基づいていた。
その時、棚の上から大きな影がゆっくりと降りてきた。それは、この戦場で唯一の、そして最も頼りになる味方だった。巨大な獣のような姿に、鋭い爪。物置の番人、飼い猫のミーアだ。
「ニャアアァン……」

ミーアは低く唸ると、戦場の真ん中にストンと着地した。ゼンマイ兵たちは一斉に動きを止め、その場に固まる。物置の世界の平和を守る、真のボス。それがミーアだった。
「ボス!」
ブルーファイターが叫ぶと、ミーアはゆっくりと目を細めた。その琥珀色の瞳は、まるで太陽のように温かい光を放っている。しかし、その光は、やがて鋭い輝きへと変わっていく。
ミーアは、前足で埃の地面を軽く叩いた。その瞬間、ゼンマイ兵たちは弾けるように四方八方へと散っていく。ミーアの威圧感は、彼らを完全に怯えさせていた。
「さすがだ、ボス。」
レッドファイターは、静かに言った。ミーアは英雄ではない。だが、彼はこの物置の世界を愛し、その平和を守るために、そこに存在していた。
だが、ミーアの平和は一時的なものだ。ゼンマイ兵たちは、また必ず戻ってくる。レッドファイターは、戦いの終わりが見えないことを知っていた。それでも、彼は戦い続ける。この物置の世界の平和のために、そしていつか、再び子供たちの手に取られる日を夢見て。

